言語行動 (Verbal Behavior)

参考: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2011/06/20 23:37 UTC 版)

 

B.F.スキナー著『言語行動』(1957)は、理論的分析と解釈が殆どであり、言語行動に関する実験的研究を元に書かれたものではなかったのですが、この本の出版以後、言語行動はセラピーや教育の方法として実験的に研究されるようになりました。

 

言語行動とは

スキナーは、自身の基礎的研究から言語行動に関する理論を発展させました(なお、彼の研究は動因操作 (Motivational Operation or MO)、弁別刺激 (Discriminative Stimulus)、反応 (Response)、好子 (reinforcer) の四項随伴性モデル (Four-term Contingency Model) を利用 したものでした)。そして、言語行動を「他者によってもたらされた結果によってコントロールされる行動」と定義し、機能分析を行いました。

言語行動はオートクリック (Autoclitic)と六種類の基本言語オペラント (verbal Operant)に分類されます。 六種類の基礎言語オペラントとは、マンド(Mand; 要求言語行動)、タクト(Tact; 報告言語行動)、 エコーイック(Echoic; 音声模倣行動;反響反応)、イントラバーバル(Intraverbal; 言語間制御;内言語)ディクテーション(Dictation; 書き取り行動)、コピーイング(Copying; 書き写し行動)、テクスチュアル(Textual; 読字行動;読字反応)です。

スキナーは、行動それ自体が妥当な研究課題であると主張し、仮説(心的)構成概念に言及することなく、行動とそれが生じる環境の関数関係を記述する ことにより言語行動を分析しました。

「時枝誠記の言語過程説とB.F.スキナーの言語行動論」 佐藤方哉
スキナーの唱えた言語行動論と時枝誠記などの日本の国語学者の言語論理との相似点について、佐藤方哉氏が独自な解釈を試みています。
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自閉症児への有益なセラピーとしての言語行動実践法

近年、自閉症児の早期集中療育の方法が、目覚しく発達してきました。その中で、スキナーの行動分析論に立ち返り、「言語とコミュニケーション」のスキルに重点を置いた、一般的な実践指導マニュアルの開発が行われてきました。その代表的なものが、マーク・サンドバーグ博士の開発されたThe Verbal Behavior Milestones Assessment and Placement Programで、略してVBーMAPPです。以下は、サンドバーグ博士のウェブサイトからの引用です。


言語行動マイルストーンズ・アセスメントと能力別選択プログラム(The Verbal Behavior Milestones Assessment and Placement Program、VB-MAPP): VB-MAPPは, 自閉症児や言語発達に遅れの認められる人用の、基準参照アセスメントのツール、カリキュラム・ガイド、ならびにスキル追跡システムです。 VB-MAPPは B.F. スキナー(1957)の言語行動の分析、既存の発達の診査事項と行動分析の分野での研究に基づいています。

 

VB-MAPPには5つの構成要素があり、それらが集合的に、能力の基準値、治療介入の方向、スキル獲得の追跡システム、結果測定のツールや他の言語研究の プロジェクトならびにカリキュラム計画の枠組みを提供します。VB-MAPPの中のそれぞれのスキルは発達段階を考慮してバランスが取られかつ測定可能なうえに、加えて各種の言語オペラント やそれに関連するスキルに照合されています。例えば、イントラバーバル(言語間制御;内言語)は既に在るタクト(報告言語行動)や聞き手としてのスキル能力の多くの側面に基づいて設定されています。VB-MAPPでは、対応する言語レパートリーの欠如に伴い一般的に発生する「暗記反応」を防ぐためにカリキュラムのバランスが配慮されています。 

 

1)先ず第一の構成要素は、お子さんの言語や関連スキルの代表サンプルを提供するためにデザインされたVB-MAPPマイルストーンズ・アセスメントですこのアセスメントには170の測定可能な学習と言語のマイルストーン(道しるべ)が、3つの発達レベル(0から18ヶ月、18から30ヶ月、30から48ヶ月)に応じてバランスよく並べられています。アセスメントの対象となるスキルには、マンド(要求言語行動)、タクト(報告言語行動)、エコーイック( 音声模倣行動;反響反応)、イントラバーバル( 言語間制御機能;内言語)動作の真似、独立した遊び、社会的機能や遊び、ビジュアルな知覚と見本会わせ、言語構造、クラスと集団の中での行動や、早期の学力などが含まれます。またさらに、言語療法士で認定行動分析士であるバーバラ・E.エッシュ博士の開発された「早期エコーイック(反響反応)スキル・アセスメント(EESA)」も付属しています。

 

2)第二の要素は、自閉症や他の発達障害をお持ちのお子さんが直面する、24の一般的な学習と言語の障壁をまとめた VB-MAPP バリアー・アセスメントです。これらのバリアーには、行動の障害、指導を受けるための準備態勢の不全、マンドの欠陥、タクトの欠陥、エコーイックの欠陥、模倣機能の欠陥、ビジュアルな知覚と見本合わせ、聞き手スキルの不全、イントラバーバルの欠陥、社会スキルの不全、プロンプト(補助)依存、視野移動、スキャニングの欠陥、条件的識別、般化の不全、行動要求によりモチベーションが損なわれること、好子(リインフォーサー)依存、自己刺激、不明瞭な発音、強迫的な行動、多動、目のコンタクトができない、また感覚過敏が含まれます。これらのバリアーを確認することにより、それらを克服してより学習が効果的にはかどるように、臨床家は具体的な治療介入のストラテジーを明らかにすることができます。

 

3) 第三の要素はVB-MAPP 移行アセスメント で、これには 18 の評価分野が含まれており、お子さんが有意義な進歩をしているかどうか、そしてより制限の緩やかな環境において学習できるスキルが得られたかどうかを確認するために有益です。このアセスメントツールはお子さんの 個別教育計画(IEP)チームが判断を下し、教育の必要性が満たすための優先を決めるための、物差しを提供します。アセスメントはVB-MAPPのほかの部分からの評価のまとめ及び移行に影響を及ぼす他の多様なスキルから成りたっています。アセスメントには、VB-MAPP マイルストーン・アセスメントの全体的なスコアの評価、VB-MAPP障壁アセスメントの全体のスコア、望ましくない行動、クラスルームでの日常の手順とグループ行動スキル、社会的スキル、学業を独立して行えるスキル、スキルの般化、好子(リインフォーサー)の多様性、スキル獲得の進度、維持、自然環境での学習、スキルの転移、変化への適合、自発性、独立した遊び、一般的な自助スキル、トイレのスキル、そして食べるスキルが含まれます。

4) 第4の構成要素は、スキルをより細かく分けたVB-MAPPタスク分析スキル・トラッキングで、より継続的で総括的な学習と言語のスキルのカリキュラム・ガイドを提供します。VB-MAPPには約900のスキルが16の領域に渡ってカバーされています。一度マイルストーンが評価されたなら、タスク分析によりお子さんんついてより詳しい情報を把握することができます。タスク分析によって明らかとなったスキルには、ターゲット領域の広範囲の補助的な要素が含まれます。これらのスキルはマイルストーンか個別教育計画(IEP)ゴールとみなすほど重要なスキルではないかもしれませんが、お子さんのスキルのレパートリーを一般的な発達を遂げている他の子供のものにより近づけるために重要な役割を果たします。さらに多様な教育と社会的な場において、スキルの般化、持続、自発性、記憶、展開、及び機能的な応用を促す様々なアクティビティを親や教師に提供します。 VB-MAPPに含まれる学習と言語スキルのタスク分析は、発達段階に応じてバランスよく配置された新しい言語行動カリキュラムの順序を表します。 これらの四つの要素に表される内容は、30年以上の年月をかけた研究、臨床現場での実践、フィールドテストと修正の集積なのです

5)第五番目、そして最後の要素はVB-MAPPプレースメントと個別教育計画(IEP)ゴールです。これは前述の四つのアセスメントに対応します。プレースメント・ガイドはマイルストーン・アセスメントの170の道標の一つ一つに対応する具体的な方向を提示します。プレースメント(能力診断による配置)によって勧められた方途は、プログラム・デザイナーが治療介入プログラムの均衡をはかるのを助け、また必要な治療介入に関連ある全てのパーツを確認するために有益です。


VB-MAPPの総合的な評価の結果は、お子さんに合った有益な言語、社会スキルと学習カリキュラムの発達を促ためのすガイドの役割を持つ貴重な情報を提供します。なお、VB-MAPP(英語版)のお求めはAVBプレスまで:http://www.avbpress.com